貿易戦争ー宣戦布告されたよ
2018-03-25


日本、ドイツ、イタリアの、遅れて来た国々がブロック経済からはじかれて、経済的苦境に陥ったのです。そのために、海外領土を求めて侵略戦争に至ってしまったとするのです。

これが終結して、ブレトンウッズ体制が確立されました。

ブレトンウッズ体制とは、IMFを設立して国家の為替政策を安定させると共に、GATTによって自由貿易主義を確立させることです。

各国間のモノの交易を盛んにさせることで、交易に関わる人々が儲かること、すなわち国が儲かることが、世界中の諸国民の繁栄に通じるからです。

支払いが滞りなく行われるためには、それぞれの国が為替制限によって、カネの流れに過剰な制限をかけないようにすることが必要です。モノの売り買いをスムーズにするためには、各国が、恣意的な輸入制限を行わないようにする必要があります。前者の役割をIMFが担います。後者は、GATTが担当します。

ここで、ちょっと注意が必要です。もう充分発展した国=先進国にとっては、自由競争によって、自国の優秀な製品を外国に売ることによって、経済発展が可能でしょう。そこで、自由貿易主義を徹底する国際法を歓迎するのです。

しかし、途上国からすれば、自国産業の育成こそ優先されると考えるはずです。かつては、保護貿易によって、産業を発展させた国々であったはずの国が随分勝手なことを言っていると思うでしょう。

そこで、このような南北問題が国際経済法という国際法分野において、様々な形で問題化し、従来より議論されてきたのであり、充分解決されてはいません。

途上国だけの国際法が指向されることもありますが、GATT・WTOのような国際経済体制のいわば憲法においては、相互に反対方向に向かいかねない一般的で多様な指標の下で、原則と例外の基準があるので、どのような場合に例外則が切り出されるかという形で、先進国と途上国が争うことが多いです。

現在、WTOの次の交渉が頓挫しているのも、先進国と新興国及び途上国の、三つ巴の争いが容易に解決しないからです。

いずれにせよ、GATT・WTOは、輸入数量制限の禁止、関税の低減、輸出補助金の禁止等を規定し、非関税障壁の撤廃を目指すものとなっています。

4、貿易戦争と法

戦後、GATTが成立し、1995年にWTOが発足しました。この間に、GATTの下で、先に述べた日米貿易戦争が遂行されたのです。

アメリカは「法」の国です。この戦争も法を巡る争いの形をとります。まず、アメリカの国内通商法が適用され、「不公正」貿易を行う国に、アメリカの制裁としての対抗措置が採られるのです。アメリカが一方的に関税を引き上げたりします。

日本にとって、最大の市場=お客さんであるアメリカを失う訳にはいかないので、日本の政府・産業界が必死に抵抗するのです。

USTRなどの行政機関の認定や、裁判所による国内通商法の適用を巡る争いという、アメリカ国内法上の争いと並行して、日米の政府・産業界の交渉が行われ、日本の政府あるい産業界とアメリカ政府あるいは産業界との協定が結ばれることになりました。輸出自主規制がそれです。

GATTは、各国政府が何らかの措置を採ることを禁止するとしても、民間である産業界が「自主的に」輸出を制限することを禁止していないのですが、これが限りなく、GATTの禁止する輸入制限に近いとも考えられるので、灰色措置と呼ばれることがあります。

自動車や半導体は、世界市場において、かつてアメリカの独壇場であった産業です。ところが、日本の製品が世界市場に、特に、アメリカ市場に流れ込み、アメリカの産業界が悲鳴を上げたのです。そこで、日本側が自主規制を強いられることとなりました。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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