オレンジ特急
2020-11-28


私の個人的な思いでを書きます。分析的な文章を期待しておられる方には申し訳ありません。今日はここでお帰りください。

座間猟奇殺人事件の死刑求刑がありました。

相模原市の障害者施設殺傷事件を思い出しました。障害者は生きる価値がないという「思想」を犯人は持っています。

そのような思想を持つ人に何も言うことはありません。

そうではない人がこの拙い文章を読んでください。

1 オレンジ特急

近鉄特急のオレンジ色に紺色のストライプの、おしゃれな車体の、小さな窓の中、何度もうなずいて、発車のベルが鳴り、動き出す電車の窓を目で追いながら僕もうなずき返して。
母の目に涙が浮かんでいた。

「会いたさ見たさに怖さを忘れ〓」。子供に会いたいから、病院を逃げ出して、どうにもちぐはぐな陽気な歌を何度も歌いながら、いつものようにいる母。

それでもどうしようもないから、また病院に逃げ込む。

昨日の夜も、夫婦喧嘩だった。猛烈ないがみ合い、がなり合い、幼い僕はいたたまれない。ぎゃーっと叫んで、泣きながら、毛布をストーブの前に投げつけると、父が僕の頬を叩いた。

母が悲しそうに僕を見つめる。

どうしようもないから、この子のためだと思って、自分がいるといけないから、そう思って、

また病院に逃げ込む。

中学になった僕が、母親に付き添ってゆく。堺市駅から、陸上クラブの遠征でいつも利用している国鉄で、天王寺。近鉄に乗り換える。バスの中も、電車の中も、僕は真っ暗な窓の外を見ている。母も僕も一言も口を聞かない。僕があげたショールを肩にかけて、大きな荷物を持って母が電車に乗り込む。

発車のベルが鳴り、小さな窓の中、何度もうなずいて、動き出す電車の窓を目で追いながら僕もうなずき返して。
母の目に涙が浮かんでいた。涙を浮かべて、僕を見つめながら、すまなそうに何度もうなづいていた。

2、貯金箱

小学生のころの僕は、たくさんのお年玉をもらった。祖父の家に行くと、決まり文句の「あけましておめでとうございます」をいうと、祖父や親戚一同がお年玉をくれる。大人ばかりの宴席に、僕がお年玉を独り占めできる。宴席のはじっこに座って、つまらなそうにしていると、周りの大人がかまってくれるけど、それが煩わしい。ただ一人の子供のお勤めだ。

母も父からお金をもらって、僕にくれる。そのお金を全部ためて、小さな金庫の貯金箱に入れていた。そのお金を母が盗む。ダイヤル式の鍵を、おもちゃだから単純で、一つ一つダイヤルを回してゆくと開けられる。ダイヤルの番号を変えても、また無くなる。お金が無くなっているのを見つけて、僕が叫んで母を責めても、もう遣ってしまっている。

あるとき、母がダイヤルを回して貯金箱を開けると、びっくり箱のように、バネのおもちゃが飛び出した。驚いている母を、かげで見ていた僕がお腹を抱えて笑った。母が、「何でこんなことをするんや〓」と顔をくしゃくしゃにして面白そうに笑った。

3、おねしょ

どうしても寝られなくて、苦しいから、薬がなくては生きていけない。数ヶ月分の薬袋が大きく膨らんだ中に、小分けされた粉薬の1日分を、ベロを出して舐めて確認すると、睡眠薬だけ取り出して、毎日、夕方に倍量か3倍量にして飲んでいた。眠剤のせいで昼間でもほうけた顔つきで、それでもそんな状態で出歩いていた。自分の調合したアッパーを飲んだせいで、双極性躁うつ病のようになった。

夕方、ご飯を食べさせると、薬を飲んで、夜8時までには正体不明になって、眠りこける。決まって、明け方5時ごろにおねしょをする。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


Twitter@eddyfour3



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