デカンショ、デカンショで・・からの...
2019-01-18


「デカンショデカンショで半年暮らす アヨイヨイ 
あとの半年ねて暮らす ヨーオイ ヨーオイ デッカンショ」
(参照。[URL]

デカンショ節は丹波篠山の民謡ですが、明治時代以降に旧制高校生の間で流行しました。ある高校教師から、次の様に教わったことがあります。デカンショとは、デカルト、カント、ショーペンハウエルの意味で、哲学書を半年読んでは、後の半年は寝て暮らすという意味だというのです。

デカルト、カント、ショーペンハウエルと聞くと、今ではちょっと古いなという感慨を持ちます。もちろん、この人達の思想が、現代に至るまで社会や政治に大きな影響を与えていることを私も知っていますし、その著作が多くの人々に親しまれ、今なお、それ自体、研究対象とされています。それでも古いなと感じるのは、その時代毎に、若い人達に好まれる思想の、「流行り」が生まれては消えてゆくからです。

私の学生時代、もう40年ほど前にもなりますが、ある先輩が言っていたのを覚えています。「少し前には、左手に資本論、右手にプレイボーイを持って、キャンパスを闊歩するのが格好良いとされていたんだ」。資本論というのは、いうまでも無くマルクスの著作で、マルクス・レーニン主義のバイブルです。プレイボーイというのは、ヌードや水着の女性のピンナップ写真を掲載していた若者向け情報誌で、相当硬い読み物も載っていたようです。その二誌を小脇に抱えるのが、当時の(男子)学生のファッションであったという戯れ言です。今では資本論を読んでいるとか、少なくともその振りをしている人達すら少なくなっていますし、プレイボーイは廃刊されました。

スキゾ、パラノという言葉を今の若い人達は余り使いません。浅田彰の『逃走論』は1984年に刊行され、一世を風靡しました。ドゥルーズやデリダなど、フランスのポスト・モダン思想は、マルクスの構造主義を「脱」構築する・・・なんかが流行った時期です。

そのときどきに若者の間でもてはやされる思想は、まるでファッション(扮装)の流行のように、流行り廃りを繰り返してゆきます。

ちょっと脇道にそれますが、(服装の)ファッションの世界に、モードという概念を想定できる様に思います。英語のmode の語義をWeblioというインターネット辞書で調べてみると、「方法、様式、流儀」という意味があり、どうやらそこから「(服装・芸術などの)流行(の型)という」意味を生じたようです。a mode of life で、生活様式や風俗という意味になります。パリ・コレクションやミラノ・コレクションなど、ヨーロッパ文化・文明の中心地で産み出されるファッションが世界中に流行を生み出します。これをモードと呼ぶようですが、単なる流行という以上に、世界の服飾業に対する影響は、静かな水面に落とす小石が大きな波紋を生じて、池の隅々に及ぶように、多大な影響を及ぼすがごとくです。パリコレで生まれた新奇なファッションが、数年後には世界中のモードになっていることがままあり、これが庶民の着るカジュアルファッションにまで生かされていくのです。

今なお、哲学思想の、世界中に影響を与えるモードを生み出す場所の一つがフランスやドイツを中心とするヨーロッパなのです。哲学のみならず、文学や、政治学、社会学等にも大きな影響を及ぼし、やがて現実の政治や行政のあり方に関係し、社会のあり方や人々の暮らし方に作用するものもあるのです。若年層がその共同体の中で最も鋭敏な嗅覚を持って、その流行りをモードとして感じ取っているのかもしれません。

もっとも、これは西欧中心的な考え方であるでしょう。世界には、西欧文化圏に必ずしも属さない、イスラム文化圏やアフリカ文化圏などもあるのだから。

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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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