元慰安婦の損害賠償訴訟と、韓国の三権分立
2019-03-26


梅は咲いたかぁ〓 桜はまだかいなぁ〓

もう直ぐですね。漸く休暇を取って、これを書いています。これから新学期の雑務に加えて、当分、論文執筆に専念する必要があるので、不定期に更新します。更新しているのを見つけられたら、読んでみてください。


日韓関係に新たな火種 元慰安婦の損賠訴訟へ
[URL]

2015年の日韓合意に反発した元慰安婦と遺族の20人が、翌年、日本政府を相手取り約3億円の損害賠償を求める訴訟を韓国の裁判所に提起しました。上記のURL は、ソウル央地裁が、本年3月8日、日本政府に対して訴訟開始を公示したため、5月から審理が開始される見込みとなった、という記事です。

1、このことの法的な意味を説明します。

(1)一般市民である私人が、国家を訴えることができる。

国家が私人と、売買やサービスに関する契約を締結することは良くあることで、仮に国家が債務不履行に陥ったとしたら、契約の当事者である私人が、履行や損害賠償を求めて損害賠償を求めることができても当然だと感じるでしょう。

国家、具体的には公権力を行使する公務員が、私人に対して不法行為を行ったとして、私人が損害賠償訴訟を提起することも良くあります。例えば、公害や薬害訴訟を思い出せば分かると思います。国の誤った許認可や監督・監視を怠ったことに基づき、多数の市民が損害を被ったとして、国を訴えます。日本においては、これが国家賠償法に基づき行われます。

契約にしろ、不法行為にしろ、民主的な国家であれば、その国の法に従い、私人が自分の国を相手取り、その国の中で民事の訴えを提起することができることが通常です。

(2)私人が外国国家を訴えることができる。

わが国においては、「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」に基づき、民事の訴えについて外国が主権免除を受けない限り、国際民事訴訟法を含めて、通常の民事手続きにより裁判することになります。

不法行為については、法10条により、外国の行為により損害を被った場合に、その行為の一部または全部がわが国領域内においてなされ、行為を行った者が行為のときわが国に所在した場合に限り、その外国は裁判を免除されないと規定されています。

国家が他国の私人から訴えられても、一切の民事裁判権を免除されるという絶対免除主義が克服されています。もっとも、完全に私人と同一ではなく、一定の制限は有ります。その範囲が国により異なるので、国際法である「国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約」が成立しました。わが国はこの条約を批准しているので、この条約が発効すると、締約国との間では、その内容が法として効力を有します。

わが国の国内法である前述の主権免除に関する法律は、この条約に準拠して、締約国と非締約国とに関わらず、わが国において、外国国家を訴える場合の制限の範囲を明確化したものです。

前述の記事は、韓国国内における裁判ですから、韓国が締結している条約や韓国の国内法が問題となります。元慰安婦が提訴したのは、当時のわが国が彼女らに行った行為が不法行為に当たるとした損害賠償請求です。韓国が加盟していないとすると、前記国連条約は韓国を拘束しませんが、国際慣習法の重要な徴憑として参照すると、日韓併合により、わが国の統治下にあった当時の朝鮮半島において、原告らが慰安婦として従事させられ、そのことにより損害を被ったとするなら、一応、その基準に該当するようです。

なお、時効も気になるところですが、韓国国内法の解釈により、これを回避するのでしょう。

(3)訴訟を始めるために、訴状の送達が必要である。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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