日本の措置、韓国の措置−国際法上の対抗措置?
2019-09-16


先日、久しぶりに奥道後温泉に行ってきました。30度を超える暑さの中、山登りの坂道を、自転車で登って行きます。汗をかいた後、馴染みの蕎麦屋でそばとそば焼酎を食し、ゆっくりと温泉に浸かります。少々のぼせ気味に、帰りは坂を下るのです。

さて、

韓国の日韓請求権協定の違反に対する、日本の輸出規制厳格化措置と、これに対抗する韓国の措置が発動される見込みです。今日は、この問題を国際社会における法の支配の観点から、考えてみます。


1,自力救済の禁止と適正手続=法の支配

次の二つの例を考えてください。

貴方が他人にお金を貸しているとします。しかし、返済期限が来ているのに返してくれません。貴方はどうしますか?貴方がお金を返してもらうために、その人の家に行ったのですが留守だったので、開いていた玄関から家に入って、中に置いてあったお金を取ったとします。貸したお金を返してもらっただけだから良いはずだと、思うかもしれません。

貴方が所有している家を人に貸していたのですが、家賃を払ってくれません。家を明け渡すように要求したのですが、出て行ってくれません。その人が留守の間に合鍵を使って家に入り、家財道具一式を玄関前に置いておきました。自分の家であるし、家賃を払わないのだから、構わないと思うかもしれません。

しかし、日本の法によると、いずれも罪に問われる可能性があります。最初の例は窃盗罪、後の例は住居侵入罪に該当します。

貴方には、貸金を返してもらう権利があるし、家賃を請求し、払わないなら賃貸借契約を止める(解除する)と要求する権利があります。法に認められた権利があります。暴力などによって自分自身で権利を実現することを、自力救済と呼びますが、わが国の法は自力救済を原則として許しません。

まず、金銭消費貸借契約を締結したので、貸金を返済してもらう権利を有し、相手方はこれに対応する法的な義務を有します。また、不動産賃貸借契約上の、家賃を支払ってもらう権利を有し、相手方は、これに対応する法的な義務を有します。自分の家として所有権を主張することもできます。

このことを認める法があるので、国民・市民は、自分の権利を他人に主張し、金を返すように要求したり、家賃を払うように、また家を明け渡すように要求することができます。もしも、他人が自発的に義務を履行し、権利実現に協力しないなら、裁判に訴えて、その権利を実現してもらえます。裁判所が法によって認められた権利を強制的に実現してくれるのです。わが国の法は、この方法以外には、実力で自分の権利を実現することを認めないという立場を取っています。

法がないとすれば、何らかの(法によらない)権利があるとしても、その実現は、暴力を含む自分の力によって図ることになります。弱肉強食のその社会では、常に力の大きなものが得をしますが、力の無い者は泣き寝入りをするしかありません。

その社会に法が誕生すると、法の認めた権利も、社会の構成員の実力によって実現させるのではなく、自力救済を禁止して、法を実施する権力機関にその実現を委ねるようになります。その方が、その社会において、人々が安心して生活を送ることができ、構成員の生存、ひいてその社会の存続にとって有利だからです。

その社会が国であると、そこに暮らす国民・市民は、自分で権利を実現するのではなく、そのことを国家機関に委ね、その権力に従うこととするのです。法を定立し、裁判所という権力機関にその実現を委ねるのです。

民主的国家を前提すると、民主主義の手続きに従い法を作り、法に定められた手続きに従い、法=権利が実現されるのです。これを適正手続の原則と呼び、わが国のような法治国家において、法の支配が達成されます。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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