三島由紀夫と全共闘ー右翼と左翼
2020-03-22


このことは私の属する大学だけではなく、相当程度に、一般的なのではないでしょうか。一斉を風靡し、ファッションにもなった、左翼思想が若者の間で最近はあまり流行らないのです。全共闘? 全学連? 革マル派? 内ゲバとか、怖そうだし。但し、私は、政治思想の専門家ではありませんので、学生運動を正確に区別してお話をしているのではありません。現在まだ活動する学生運動の大部分が、暴力主義的な運動とは一線を画するものであるとされます。


2、三島由紀夫のこと

文学や政治思想の専門的知見というより、私の個人的な思い出を書いておきます。高校生のとき、純文学にしか価値を見出せなかったので、純文学の小説を乱読していました。無数の詩作など、たわいもないものですが、そういった生活を送っていた典型的な文学少年でした。そのころ、強烈な印象をもったのが、三島の小説です。『金閣寺』に衝撃を受けて、三島の政治思想なんか全く知らずに、幾つかの小説を憑かれたように読み耽っていたことがあります。

その後、大学に入ってから、彼が右翼の思想家であり、自衛隊員の前で演説をした後、割腹自殺したこと、筋骨隆々の褌姿の写真、それにゲイであったことを知ったのです。小説からは窺い知れず、それはもう驚いたものでした。

全共闘学生らとの討論会は、三島が自殺する直前の時期に開かれたものです。前述の記事によると、三島と学生らが理知的に、笑いを交えながら、長時間の討論を行ったのです。

右翼の政治思想にも疎いので、三島由紀夫の思想的系譜や、反米主義とも親米主義とも結びつく「正統」右翼の諸団体との関係を分析することはできません。しかし、この討論会が、よく考え、練られた政治思想としての、左翼と右翼の実に興味深い議論であったことは想像に難くありません。

決して妥協することのない、従って、結論的に根本的な同意を予定しない議論が、しかし、互いの理解を深め、あるいは影響を及ぼし得る、民主主義の基底をなすものであることは指摘しておきます。このような議論は相手を打ち負かすことのみを目的とするディベートとは異なります。法廷で実務家たちが繰り広げる議論や、選挙に際して行われる政治家の討論は、多くの場合にディベートです。これも目的にかなった必要悪ではありますが、区別する必要があります。


3、「右」と「左」

政治的な意味で、左翼とか右翼という場合、上のような学生運動が盛んであったような時代、冷戦期において、社会主義・共産主義と反共主義を指す場合が多かったのです。特に、ソビエト連邦の崩壊は、マルクス・レーニンの、ユートピアである社会主義の理想が、現実の国家としては存在し得なかったことを明らかにしました。そこで、冷戦終結とともに、リベラルという政治思想が不要となったという主張があります。そこでいうリベラルというのが、社会主義あるいは社会主義に多分に好意的な政治的立場ということになります。特に、冷戦下、社会主義国家の建設と、ソビエト連邦を頂点とする社会主義陣営に与することを目指す立場です。

アメリカにも保守対リベラルの対立があるのはご存知でしょう。アメリカは共産主義を非合法としています。そこでリベラル派とは大要、民主党の政治家を指します。オバマ元大統領が国民皆保険制度を創設した政策を、保守主義者は社会主義と呼んだりしますが、上の意味のマルクス・レーニン主義と異なることは自明です。今年の秋に行われる大統領選挙に向けて民主党候補者を選ぶ選挙が行われています。バイデン議員が中道であるのに対して、サンダース議員は自らを社会民主主義者であると呼びます。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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