50男と14女の関係?
2021-06-18


「50才が14才と性交しても、真の恋愛であれば犯罪とするべきではない」と、立憲民主党の本多議員が党内WTにおいて発言しました。ポリタスTVにおいて、当事者の一方である大阪大学の島岡教授が詳細を述べています。
[URL]
(「50代が14歳と性交」立憲本多議員の発言が物議を呼んだ性交同意年齢の刑法改正議論 法務省の検討会での議論と問題の発言|ゲスト:島岡まなさん(6/16) #ポリタスTV)

1,
 性交同意年齢を引き上げる刑法改正が議論されています。刑法の専門ではないのですが、個人的には少なくとも16才までの引き上げに賛成です。真の恋愛と勘違いした50男は捕まってもおかしくない。法があったとすれば、真の恋愛であればなおさら、その年齢まで成人の方が抑制すべきです。明治期の日本であれば、14才ぐらいの女性が金持ちの男の許にその種の「奉公に上がる」ことが有り得たのかもしれません。経済力のある男性が女性を扶養し、子孫を残すべきであるとする文化があったのです。婚姻適齢が男女において差があったのも、そのような日本の文化を反映しているのでしょう。しかし、文化は変わります。男女雇用均等法が施行され、女性の社会進出が当たり前になりました。少子高齢化の進行によって、女性の労働力が社会において活かされざるを得なくなっています。最近、婚姻適齢も、男女とも同一年齢の18才とされました(2022年4月施行)。女性が「家」ないし男性から独立する経済力を獲得し、女性差別が禁止される社会であるのです。

 性交同意年齢の引き上げがジェンダー論と結び付けて主張されるのは、上のような日本社会の変容を受けて、若年女性が経済力ある男性から性的搾取を受けることが不当であるとする観点がまず、考えられます。また、強制性交罪における通常被害者である女性の側の立証の困難を緩和するという観点があります。暴力や被害者との関係における優位性に基づき、弱者である女性を保護する必要があるという文脈において、ジェンダー論に関係します。一般論として、主として女性被害者の問題であることは恐らく間違いが無いのでしょう。

 立法事実として、男性と女子中高生との援助交際が問題視されているのは承知していますが、男女の逆パターンや同性間の問題にも気づくべきです。例えば、20才と14才の恋愛はどうか。やはり性交までは思いとどまるべきか。20才が捕まって良いか、微妙にはなります。私の結論は全てアウト。そういうと、50才の女性と14才の男性のパターンにおいて、女性の犯罪とされるべきかについて違和感を覚える人が結構いるのではないでしょうか。しかし、これが許容されるべきだとするのも、強くて早熟であって良い男性像を前提しているように思われます。これが不快であり、精神的な傷を負うような男性であったならどうでしょう。判断能力の十分ではない若年者が上手く拒絶できない場合があるとして、その人格の発達過程を保護するべきだとするなら、性別に関わらす同意を可能とするべきではないはずです。これも広義においてはジェンダー論に関わるかもしれませんが、定型的に弱者である「女性を」一方的に保護するということではありません。

 もし真の恋愛で、当事者同士や周囲が認めていたなら、刑事事件化しません。誰かが問題視したら、刑事事件になりますが、その解決方法としては、示談もあり得ます。判断能力の類型的に劣る若年者の保護のために、とにかく刑事事件にはなるという制裁があって良いと思います。

2,
 冒頭の本多議員の発言は、立憲民主党というリベラル政党の党内議論におけるものでした。主として「女性保護」の観点から、性交同意年齢の引き上げを党の立法提案とするべく議論したようです。50の男が捕まるべきではないとすることは、認識を疑いますが、この議員の発言の真意は犯罪化に対する慎重論であったと考えられます。同意を問わず強制性交となる法定レイプ罪の範囲が拡張されるからです。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

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「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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