日大アメフト部問題
2018-05-26


ユーチューブに動画がアップされて以来、大きな反響を呼び、社会的な問題となりました。被害学生の所属する関西学院大学チームの監督の抗議や父親の記者会見、加害学生の緊急記者会見、日大前監督・コーチによる記者会見と続き、遂に、日大学長の記者会見が開かれました。テレビでも連日報道されています。

1、反則行為と20歳の記者会見

問題となる行為は、ボールを持たず、集団から離れてゆっくり歩いているQBに対する猛タックルでした。被害者は全治3週間の怪我を負いました。

被害選手が後ろからタックルを受けて、もんどり打ってひっくり返る様子が、ユーチューブにアップされ、大きな反響を呼んだのです。あれで全治3週間で済むというのが信じられないくらいでした。脊髄損傷で麻痺が残る恐れのある危険行為です。

フットボールは大男が身体をぶつけあう激しいスポーツですね。フィールドの格闘技とも言われます。ゲームの最中には、ボールを持っている相手選手が怪我をするかもしれないと心配して躊躇していることは許されないでしょう。実際、フットボールの試合で、半身不随の後遺症を残すような怪我をするような例があります。

法律上も、本来なら、暴行・傷害に問われる行為でもそれがスポーツのルールに従う、正当な行為である限り、罪には問われません。例えば、ボクシングで殴り合っても、犯罪には該当しません。日大アメフト部の選手の行為にしても、意図的に相手に傷害を与えるのでない限り、ゲーム中の不幸な事故であったとされたでしょう。

しかし、加害学生が意図的に怪我をさせる行為であったことを記者会見で明らかにしました。しかも、監督やコーチの指示に従ったと言うのです。

加害学生が陳述書を読み上げていた様子からは、その内容が真実であるように思われましたが、監督・コーチの指示があったかについては、当事者同士で対立があります。

冒頭、加害学生の弁護士が、未成年に近い学生が実名を明かして、顔を出して記者会見に臨むことがどのように危険なことか、そのことを認識しつつ会見を行う旨説明があり、その点を理解して欲しいと述べていました。日本全国でこの記者会見の模様が放映されたのです。

実際、学生スポーツを巡る不祥事で、20歳の学生が会見を行うなど前代未聞のことです。大方の同情を買ったと言えるでしょう。自身の責任を自覚し、深く反省していることが窺われ、もうアメフトをやる資格もないと、うな垂れる姿は痛々しく真情が溢れていました。

日大側が事実を公表することを怠っている間に、大きな社会問題となる過程で、被害学生側が被害届を提出し、加害学生が異例の緊急記者会見に追い込まれたのです。監督・コーチが一刻も早く真実を語り、大学が適切な対処を行なっていたとすれば加害学生をここまで追い詰めることが無かったはずです。

2、加害学生による記者会見の意図

ここで、加害学生による記者会見の意図が何であったかを考えてみます。

まず、加害学生が相手選手に傷害を与えようとする意図を有していた、故意の行為であることは、ユーチューブの動画を見る限り疑うことのできないものです。複数の動画が残されており、故意行為であることを否定することが可能ではなかったと思われます。最初のあの危険プレーは、下半身へのタックルなので、ルール上、即刻退場とはならないようです。プレーを継続した加害選手が、相手チームの、怪我をしたQBと交代したQBにも、同様の危険なタックルを行い、漸く退場になった点も、最初の行為が故意であったことを裏付けています。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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