単純労働力の受け入れ
2018-06-23


留学生は「留学」という資格を持ち、日本の大学等の学校で学ぶ学生・生徒ですが、一定の資格外活動、すなわちアルバイトが認められます。

また、これら「現行の」在留資格毎に許可される在留期間は、更新可能です。在留期間が終わるまでに、法務大臣により更新が許可されると、更に、同期間の在留が認められ、再度、更新可能です。

これに対して、「技能実習」という在留資格は、その資格においては、同一人に対して、一生に一度だけ認められるもので、一度きりの在留期間を終えると、帰国しなければなりません。


3、技能実習制度

本来、途上国の技術開発・経済発展のために必要な技術者等の人材育成をわが国が引き受けるという趣旨の制度です。例えば、工場で働く旋盤工や板金工などがいなければ、製造業が発展しません。しかし、熟練工のいない途上国で、一からそのような人材を育てるのは困難です。そこで、途上国からの実習生がわが国で働きながら技術を学ぶための資格なのです。

ところが、以前のブログでも述べたように、わが国における単純労働の担い手として、この資格による在留外国人が活用されているのです。

また、多くの外国人労働者が、単にわが国に出稼ぎに来るという目的を有しています。

そこで、帰国後の職業に無関係に、わが国において「就労」しています。母国では農業に従事している人が、わが国の水産加工業者の下で牡蠣の養殖を行うことや、母国での仕事とは関係のないクリーニング屋さんで働くなど、わが国の受入団体により斡旋された様々な職種の実習実施者の下で単純労働の労働力となっているのです。

実際に、本来的な役割を果たしている場合もあるのですが、実態は、国際協力という美名の下に、ほぼ単純労働の不足を補うものでしかないと言って良いでしょう。


4、技能実習の新制度

政府の発表した上述の新制度は、十分具体化されていませんが、技能実習制度の改定であるようなイメージです。介護のための技能実習制度が始まったようですが、これを建設や農業などの新分野にも広げ、基本的には5年間を上限としつつ、試験合格等により、他の現行の在留資格に移行するという制度です。

従って、政府の強調するように、当初5年間の労働者の受け入れは、必ずしも移民ではないのです。しかし、他の資格に移行し、わが国に定住するに至るときに、移民であることになります。

政府が、このように「移民」という言葉を嫌っている理由は何でしょうか。このような慎重な言葉遣いは、恐らく保守系の政治家・思想家や、与党支持層に配慮しているからでしょう。あくまでも、50万人超の「人材」の受け入れを目指すというのです。


5、単純労働者の受け入れと、高度人材移民の受け入れ

これまで、単純労働者を移民として受け入れることを、政府は徹底して敬遠してきました。ここで移民とは、日本に一定期間以上定住ないし永住する外国人のことであるとします。移民政策をわが国が取っていないと言うのは語弊があります。高度人材としての外国人に対しては、日本が門戸を開いて久しいのです。

特に、最近は高度人材ポイント制を採用して、高学歴や収入により、一定以上のポイントを獲得できる外国人は、早期に永住資格に移行できます。高度専門職という資格です。従って、高度人材外国人の移民奨励がなされていると言えます。わが国におけるIT産業の発展に欠かせないプログラマーなどの高度人材の人出不足も深刻であり、高度人材移民については、経済発展を遂げた韓国、台湾や西欧各国とも、人材獲得競争となっています。

日本が留学生の増加計画をたてて積極的に受け入れているのですが、この留学生が将来日本で就職し、定住するなら、自動的に高度人材外国人の候補となります。前述の「経済財政運営と改革の基本方針2018(仮称)」でもその奨励策が掲げられています。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

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「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
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「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


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