貿易戦争−宣戦布告されたよ
2019-08-04


暑いですね。ようやく学期末試験の採点を半分終えました。

夏風邪をひいてしまいました。冷房をつけて寝ていたせいでしょう。家の内と外の温度差には気を付けましょう。

次回は、8月17日ごろ更新の予定です。


ホワイト国除外

 8月2日、日本の輸出管理において優遇国いわゆるホワイト国から、韓国を除外することが閣議決定されました。国民の意見聴取の手続きにおいて、4万件超の意見が政府に寄せられました。筆者は法の研究者として、経済規制の政令改正について、これほどの意見が集まったことをかつて知りません。このこと自体が異例のことと思われます。その内、95%が賛成だったようです。

 この決定に対して、韓国の文在寅大統領が直ちに閣僚会議を開催し、日本の閣議決定に対して強い非難を表明しています。冒頭部分の大統領演説に引き続き、この閣議の様子がテレビで生中継されました。このことも極めて異例です。
 
(産経新聞の特集:徴用工・挺身隊訴訟がこの間の事実関係をまとめていて分かりやすい。
 [URL] )

 韓国大統領は極めて強い調子で日本の措置を非難しており、朝日新聞(3日朝刊)によると、日本の措置が元徴用工訴訟に対する経済報復であり、「盗っ人猛々しい」、「韓国は日本に二度と負けない」と述べています。更に、GSOMIAの破棄を示唆し、日本をホワイト国から除外するとともに、韓国側の経済規制強化による対抗措置を採るとしています。

 韓国の新聞各紙は、一斉に、日本の措置を批判し、大規模な抗議デモが実施されました。日本製製品の不買運動も報じられています。国内世論が対日批判にまとまり、いよいよ経済戦争の宣戦布告を日本が行ったので、長期戦も辞さないということのようです。筆者も誇張表現のつもりで、この言葉を使ったのですが、実際の「経済」戦争に突入しそうな様相を呈してきました。

 戦争しなくないで良いですか?少々前に聞き覚えがある台詞です。武力を用いた戦争は真っ平ですが、経済戦争は有り得るべきであるというのが、筆者の持論です。経済力を背景とした、法と論理の戦争です。前回も述べたように、これが実際の戦争に発展しないという歯止めを意識しつつ、しかしアメとムチを使い分ける巧妙な外交を政府には期待したいと思います。


日本政府の措置と国際法

 韓国大統領によると、強制労働の禁止と三権分立が世界の普遍的価値であり、これが国際法原則であるとして、日本がそれらの価値を踏みにじるものであり、国際法に違反すると非難しています。

 まず、そのことが普遍的と目される価値であることには、誰も反対しないでしょう。第二次世界大戦中、日本の統治下にあった朝鮮半島で、強制的な徴用があったこと、及び、自主的に応募した徴用工を含めて朝鮮半島出身者が、過酷な労働環境において、多大な肉体的、精神的苦痛を被ったことは認めざるを得ません。このようなことが二度と引き起こされないような日本国であり、世界であるべきであるということを、日本が追求しないわけがありません。問題は、元徴用工に対する補償が、日韓請求権協定という国際法において、日本と韓国の間で解決された事項であるか否かという一点にあります。

 韓国の裁判所は、被害者とされる原告らと日本企業との間の私人間の補償について、特に、精神的苦痛に対する損害賠償としての慰謝料の請求まで、国家間において決定してしまうことはできない、と判決しました。韓国憲法の重要な原則である個人の幸福追求権の保障にもとるというのです。


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プロフィール


職業:大学教員
専門分野:国際関係法・抵触法
専攻:国際取引法及び国際経済法
  簡単に言うと、貿易を行う企業が他国の企業と訴訟を行う場合の法律問題です。また、WTOや経済連携協定の内容、EUのような国家連合、アメリカ合衆国の通商法について興味を持っており、大学で講義をしています。
1959年生まれ

ちなみに、ゲイではありあせん。

同じ筆者のホームページ

「寡黙な国際関係法」(大学の授業用HP)
http://www.geocities.jp/gnmdp323/

「裁判のレトリックと真相」
筆者が原告となった裁判を通じて、裁判制度の問題を扱っています。
http://www.asahi-net.or.jp/~aj9s-fw/index.html


Twitter@eddyfour3



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